リリースから20年を迎えた「Let It Be…Naked」と“地上で最も悲惨な”フォーマットだったCCCDを振り返ってみた

結局のところ、どのような形でリリースされようが「あるがまま」にはなれないアルバム 洋楽

結局のところ、どのような形でリリースされようが「あるがまま」にはなれないアルバム

今年の10月で20年を迎えました。その名の通り1970年にリリースされた「Let It Be」を“本来の姿に”戻すというコンセプトの元で登場したアルバムです。LDが廃盤になってから映像ソフトがリリースされていなかった(くっそ汚い画質のブートDVDは出回っていた)同名のドキュメンタリー映画のリマスターも発売するかも!?といわれていましたが、結局出ませんでしたね・・・

プロデューサーはポール・ヒッグス氏、ガイ・マッセー氏、アラン・ルース氏で、Apple Musicで配信されているデジタル音源には収録されていませんがいわゆる「ゲットバック・セッション」でのメンバーの会話やアウトテイクの断片を収録した「フライ・オン・ザ・ウォール」がCD、CCCDとかいうゴミ(後述)、LPには付属していました。

Let It Beというアルバム自体リリースまでいろいろあり、一度グリン・ジョンズの手によって「ゲット・バック」としてまとめられたものの没になり、その後フィル・スペクターの手により再度編集された上で同名映画のサウンドトラックもかねて世に出たという経緯があります。

当初「メンバーが意図した、本来の姿」であることをプロモーションなどで謳っていたため「グリン・ジョンズのゲットバックがようやく正規化されるんだね!?やったあああああああああああ!」と思っていたのですが全然違いました・・・別のテイクを貼り付けた、ネイキッドというかサイボーグともいえるリミックスアルバムで正直「Let It Be…捏造」というタイトルの方が正しいのではないでしょうか。

例えばアイヴ・ガッタ・フィーリングはビートルズにとって最後のライブとなった1969年1月のルーフトップ・コンサートで録音されたバージョン1(オリジナルのLet It Beで採用されたのはこちら)とバージョン2をつぎはぎしていて、最後の「いぇー!いぇーーーー!!」がえらく不自然でかっこ悪い・・・(ただこれで初めて“正規音源としては”初めて世に出たこともあってかポールはこの曲を演奏する際にこれに近い歌い方をするようになりましたが・・・)

ディグ・ア・ポニーは出だしと終わりの「All I Want Is!」が相変わらずカットされていますし、かのあゆが大好きなジョージの名曲、アイ・ミー・マインも相変わらず曲の長さが本来のものではなく、延長されたままです。なぁにが「裸」じゃ!

前述の通り劇場版Let It Beの映像ソフトがリリースされなかったこともあって「何のために生まれたのかよくわからない」というのが正直な感想なのですが、サイボーグだろうが何だろうがビートルズの名曲ではあるのでリミックスアルバムとして聞く分には「悪くは」ありません。ただ2021年には前述の「ゲット・バック(アルバム)」も収録されたLet It Beのスーパー・デラックス・エディションがリリースされているのでこのアルバムを今あえて購入する意味はないと思います。

なお2021年には幻になったアルバムと同名の映画「ゲット・バック」が公開されていますが、おそらくオリジナルの「Let It Be」は特にポールの意向もあって少なくとも当面リリースされることはなさそうです。

正直かのあゆも今ではあまり聴いていませんし・・・ただなぜかたまに、たまに“捏造”バージョンが聴きたくなるので最初から「イエロー・サブマリン ソング・トラックス」「LOVE」みたいにリミックスアルバムとして発表していればまた評価は異なっていたかもしれません。

かのあゆが聞きたかったのはゲットバックであってレット・イット・ビー・・・捏造ではないので・・・あと結局のところ、フィル・スペクターが編集した「Let It Be」がオリジナルであることはもうポールが意図してた姿ではないにせよかわりないので・・・正直捏造よりオリジナルの方が好きだし。

さらに最悪だったのは日本、ヨーロッパなど一部の地域ではCDのフォーマットから大きく逸脱した悪名高いCCCDでリリースされたことでしょう。今では信じられないことですが、MP3フォーマットが一般してデジタルオーディオプレイヤーが出回り始めた2000〜2004年頃の音楽協会は「違法コピーがネット出回るからPCでエンコードしちゃダメ!デジタル・オーディオ・プレイヤー?何それ?」というスタンスだったのでこのような黒歴史が生み出されることになってしまいました。

 

Let It Be…Nakedがリリースされた頃は既にAppleがiPodを発表していて、日本ではまだ対象外でしたがiTunes Music Store(現iTunes Store)もローンチしていたので当時の音楽業界がいかにデジタル音源についての考えが遅れていたかがよくわかります。

 

実際確かに当時違法音源配布サイトやWinMXやNapstarといったP2Pソフトが普及していて違法な形でMP3音源が大量に流通していたので負のイメージを持ってしまうのもわからなくはないのですが・・・

 

PCでも聴けなくはないのですが、データトラックに収録された、収録されている音源はビットレートがえらく低く本来の音質よりも劣る上に勝手にインストールされるマルウェアそのものともいえる専用プレイヤーアプリでしか再生できないというアレな仕様で、しかもMacは対象外でした。

 

さらに言えば一般的な音楽CDで採用されている「レッドブック規格」に準拠すらしていないため、本来ターゲットにしているCDプレイヤー、オーディオコンポでまっとうに再生できない・・・ところか機器を破壊する場合すらあるあんまりな仕様で、逆にPCではドライブによっては普通にCD-DAトラック部を再生できてiTunesなどで通常通りエンコードすら出来るというガバガバ仕様だったこともあって、ユーザーやアーティストから反対意見が多くなった結果2005年頃にはフォーマットとして完全死滅しました。ビートルズ関連で言えばジョージのダーク・ホース時代にリリースされたアルバム(とそれをまとめたボックスセット“ダーク・ホース・イヤーズ”)もこのCDですらないフォーマットで発売しています。

 

そのため当時の2ちゃんねる内ビートルズ板に立てられたスレッドでは「日本版とヨーロッパ版は買うな!買うならCDフォーマットでリリースされているアメリカ盤やイギリス盤を買うんだ!」とかいろいろ有益な情報が書き込まれていました。他の地域より発売が早かったのでかのあゆはCCCDフォーマットであることをわかった上で日本盤を購入しましたが・・・オリジナルの「Let It Be」を不自然に叩いたブックレットの解説があまりに酷かったのでなんとも言えない気持ちになってしまいました。なお後で日本盤も現在販売されている再発盤では“通常の”CD-DAフォーマットを採用しています。

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